クラウドコンピューティングと税理士

<クラウドコンピューティングが、税理士業界にもたらす影響>
~ J-SaaSの現状を踏まえて ~

 2008年7月、経済産業省は「中小企業向けSaaS活用基盤整備事業」を開始した。これは、アプリケーションソフトをSaaSとして提供することで、情報技術を活用するための経営基盤が必ずしも充実していない中小企業、小規模企業の競争力を強化することを目的としており、2009年3月31日より、財務会計などのASP/SaaS事業がJ-SaaSの提供を開始した。しかし実際には利用者が伸びず、2010年3月からは、株式会社富士通が幹事会社として運営を引き継いでいる。J-SaaSのホームページを見ると、会計処理だけでなく、販売管理や在庫管理、給与計算や税務申告まで数多くのラインアップが揃えられている。

これに対して、会計事務所においては、依然としてシステムを社内に導入して利用する形態が一般的である。
会計事務所が関与先に対する関与の仕方については、
① 記帳から決算まで一括して行う記帳代行のパターン
② 記帳は関与先が行い、月次のチェックと決算業務を行うパターン
③ 記帳から決算まで関与先が行い、申告のみ行うパターン
①と②の場合、例えば関与先の仕訳に誤りがあれば、メールでのやり取りをするなど効率が悪く、二度手間になるケースも多い。またデータが二元化してしまう恐れがあり、そのための確認作業だけで莫大な時間を費やすというケースも起こり得る。
上記に対して、クラウド化すれば実際にどのようなメリットがあるのか。
大きく分けて①業務の効率化と②コスト削減メリットがあげられている。
①業務の効率化ではデータの二元化がなくなり、常にデータは一つということになる。極端にいえば、会計事務所と関与先が同時に入力しても会計データは一つであり、各々が最新の会計情報を共有することが可能である。ソフトのインストールが不要なため、設定等を始めるときの手間がかからず、バックアップといった作業も不要になる。さらに、バージョンアップも自動的に最新のものになるため、その作業が不要になる。
②のコスト削減では①の業務の効率化で人件費の削減になるだけでなく、自分のパソコンや自社のサーバーで保存する必要がないため、高性能で容量の大きいパソコンや専用サーバーも必要がなくなる。またセキュリティーについてもデータはクラウド上に存在するため、火災や大地震の心配も要らなくなり、そのためのコストも不要になる。さらに最もコストがかかるバージョンアップについても、ベンダーが自動的に行ってくれるため、無料か、もしくは非常に安価なものになるであろう。
しかし、導入をためらう理由として、「既存システムとの連携に不安」「セキュリティーや機能性能が不安」「カスタマイズ性が不安」がある。
中小企業におけるSaaS利用意識調査では「使えないと思えばすぐ解約できる」「社内にITの専門家がいらない」といった声もあり、安く、早く試せて、安心といったメリットがあげられている。
官主導のJ-SaaSが不発に終わった今、再びクラウドという新しいキーワードで、システムを所有せずにサービスとして利用する形が、中小企業の会計や基幹業務にまで広がっていくのか?税理士業界としても注目される部分である。

金子会計事務所
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